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非居住者の納税義務

㈠ 非居住者及び法人の納税義務・源 泉徴収

2   非居住者の納税義務

⑴ 総合課税に係る所得税の課税標準、税額等の 計算

① 改正前の制度の概要

 非居住者については、次の区分に応じそれ ぞれ次に定める国内源泉所得が総合課税の対 象とされ(所法164)、その所得の金額及び所 得税の額を計算してわが国に申告し、その所 得税の額を納付することとされています。

イ 恒久的施設を有する非居住者 イ及びロ の国内源泉所得

イ 所得税法第161条第 1 項第 1 号及び第 4 号に掲げる国内源泉所得

ロ 所得税法第161条第 1 項第 2 号、第 3 号、第 5 号から第 7 号まで及び第17号に 掲げる国内源泉所得(同項第 1 号に掲げ る国内源泉所得に該当するものを除きま す。)

ロ 恒久的施設を有しない非居住者 所得税 法第161条第 1 項第 2 号、第 3 号、第 5 号 から第 7 号まで及び第17号に掲げる国内源 泉所得

 この申告の対象となる国内源泉所得につい て課される所得税(以下「総合課税に係る所 得税」といいます。)の課税標準及び所得税 の額は、居住者について適用される規定に準 じて計算することとされています。具体的に は、所得税法第 2 編第 1 章から第 4 章までの 規定(居住者に係る所得税の課税標準、各種 所得の計算、所得控除及び税額の計算など)

に準じて計算することとされていますが、こ のうち減額された外国所得税額の総収入金額 不算入等(所法44の 3 )、所得税額から控除 する外国税額の必要経費不算入(所法46)、

医療費控除等のほとんどの所得控除及び外国

税額控除の規定は除かれています(所法165)。

 非居住者の課税標準及び所得税の額につき、

前記の居住者に係る所得税の課税標準等の計 算の規定(以下「居住者に係る規定」といい ます。)に準じて計算する場合に、非居住者 特有の事情に配慮するよう、必要に応じて居 住者に係る規定の適用範囲の限定や、非居住 者に適用するための所要の修正規定が次のと おり定められています(旧所令292)。

イ 法第24条(配当所得)

 非居住者にあっては、配当所得の金額の 計算に当たって控除することができる株式 その他配当所得を生ずべき元本を取得する ために要した負債の利子については、その 非居住者の有する当該元本で国内源泉所得 とされる配当等を生ずべきものに限ること とされています。

ロ 法第30条(退職所得)

 退職所得控除額については、退職手当等 を受ける者が居住者であった期間内に行っ た勤務その他の人的役務の提供に対応する 部分の金額に限ることとされています。

ハ 法第45条(家事関連費等の必要経費不算 入等)

 非居住者については、必要経費不算入と される税には、外国又はその地方公共団体 により課される所得税等(所得税法第45条 第 1 項第 2 号から第 5 号までに規定する租 税又は延滞金若しくは加算金をいいます。)

に相当するものを含むものとされています。

ニ 法第47条(棚卸資産の売上原価等の計算 及びその評価の方法)

 棚卸資産の所得税法上の評価方法等につ いての規定の対象とされるのは、非居住者 の場合にはその保有する棚卸資産のうち国 内にあるものに限ることとされています。

 また、非居住者が国外に保有していた棚 卸資産を国内に移入した場合には、その移 入の時においてその非居住者が当該棚卸資 産を取得したものとして棚卸資産の評価方

法等の規定を適用することとされています

(旧所令292②)。

ホ 法第49条(減価償却資産の償却費の計算 及びその償却の方法)

 減価償却資産の所得税法上の償却方法等 についての規定の対象とされるのは、非居 住者の場合にはその保有する減価償却資産 のうち国内にあるものに限ることとされて います。

 また、非居住者が国外に保有していた減 価償却資産を国内に移入した場合には、棚 卸資産と同様に、その移入の時においてそ の非居住者が当該減価償却資産を取得した ものとしてその後の償却費等の計算を行う こととされています(旧所令292②)。

ヘ 法第50条(繰延資産の償却費の計算及び その償却の方法)

 繰延資産の所得税法上の償却方法等につ いての規定の対象とされるのは、減価償却 資産と同様に、非居住者の場合にはその保 有する繰延資産のうち国内において行う事 業に帰せられるもの又はその非居住者の国 内にある資産に係るものに限ることとされ ています。

ト 法第51条(資産損失の必要経費算入)

 非居住者が有する資産等でその損失が生 じた場合に必要経費に算入することができ るのは、非居住者の有する資産及び山林に ついては、所得税法第51条第 1 項、第 3 項 及び第 4 項に規定する損失が生じた時にお いて国内にあったものに限るものとし、売 掛金等(同条第 2 項に規定する売掛金、貸 付金、前渡金その他これらに準ずる債権を いいます。)については、非居住者が国内 において行う事業に係る売掛金等に限るも のとされています。

チ 法第52条(貸倒引当金)

 非居住者については、貸倒引当金の設定 対象となる貸金等は、その非居住者が国内 において行う事業に係る貸金等に限ること

とされています。

リ 法第53条(返品調整引当金)

 非居住者については、返品調整引当金の 設定対象となる棚卸資産の販売は、その非 居住者が国内において行う対象事業に係る 棚卸資産の販売に限ることとされています。

ヌ 法第54条(退職給与引当金)

 非居住者については、非居住者の使用人 のうちその非居住者が国内において行う事 業所得を生ずべき事業のために国内におい て常時勤務する者に限ることとされていま す。

ル 法第57条の 2 (給与所得者の特定支出の 控除の特例)

 非居住者については、給与所得に係る特 定支出は、その支出のうち国内において行 う勤務その他の人的役務の提供に対応する 部分に限ることとされています。

ヲ 法第58条(固定資産の交換の場合の譲渡 所得の特例)

 非居住者については、取得資産及び譲渡 資産はその交換の時において国内にある固 定資産に限ることとされています。

ワ 法第62条(生活に通常必要でない資産の 災害による損失)

 生活に通常必要でない資産は、恒久的施 設を有する非居住者については、その非居 住者の有する資産のうち国内にあるものに 限ることとされ、恒久的施設を有しない非 居住者については、その非居住者の有する 資産のうちその譲渡により生ずべき所得が 国内源泉所得に該当するものに限ることと されています。

カ 法第65条(延払条件付販売等)

 非居住者については、延払条件付販売等 は、非居住者が国内において行う事業に係 る当該延払条件付販売等に限ることとされ ています。

ヨ 法第67条の 2 (リース取引に係る所得の 金額の計算)

 非居住者については、対象となるリース 取引は、非居住者が国内において行う事業 又は非居住者の国内にある資産に係るリー ス取引に限ることとされています。

タ 法第72条(雑損控除)

 雑損控除の対象となる災害又は盗難若し くは横領による損失は、非居住者の有する 資産のうち国内にあるものについて生じた 当該損失に限ることとされています。

 また、恒久的施設帰属所得に係る各種所得 の金額を居住者に係る規定に準じて計算する 場合に、次のことが規定されています(所法 165②)。

イ 居住者の事業所得の金額等を計算する場 合に必要経費に算入すべき金額は、売上原 価等及び販売費、一般管理費等の費用(販 売費等)とされており、販売費等には、償 却費以外の費用でその年に債務の確定しな いものを除くこととされています(所法37

①)。また、山林所得の金額等を計算する 場合に必要経費に算入すべき金額は、山林 の植林費等、その山林の育成又は譲渡に要 した費用(育成費等)とされており、償却 費以外の費用でその年に債務の確定しない ものを除くこととされています(所法37②)。

 これに対し、非居住者の事業所得の金額 等を居住者に係る規定に準じて計算する際 のこれらの販売費等及び育成費等のうち、

恒久的施設帰属所得を計算する場合の内部 取引に係るものについては、債務の確定し ないものを含むこととされています(所法 165②一)。

ロ 販売費等及び育成費等並びに一時所得の 金額の計算上控除される支出した金額には、

非居住者の恒久的施設を通じて行う事業及 びそれ以外の事業に共通する販売費等及び 育成費等並びに支出した金額のうち、一定 の方法により配分した金額を含むこととさ れています(所法165②二)。

② 改正の内容